安いオフィスチェアの注意点|削られやすい部分と見分け方
安いオフィスチェアで最初に妥協されるのは、座面の奥行き調整と肘掛けです。
この2つが省かれると、机に向かったときに座面が深すぎて浅く腰かける形になり、背もたれに体重を預けられません。
逆に言えば、座面の高さ調整だけは価格帯を問わずほぼ全機種にあるので、そこは選ぶ基準になりません。
同じ棚に並んだ数千円差の椅子を見比べるなら、見るべきは背もたれの高さと座面の作り方。
本ページでは、安い椅子でどこが削られるのか・タイプ別に向く人と向かない人・買う前に測っておく寸法まで、まとめて紹介します。
安いオフィスチェアで最初に削られるのは、座面の奥行きと肘掛け
価格を下げる方法は、部品を減らすか、素材を安いものに替えるかのどちらかです。
実際の製品で先に消えるのは、座面の奥行きを前後にスライドさせる機構と、高さや角度が動く肘掛け。
この2つは部品数が多く、組み立ての工程も増えるためです。
奥行きが固定だと何が起きるか。
座面の前端が膝の裏に当たる人は、当たりを避けるために浅く座ります。
すると背中と背もたれの間に隙間ができて、腰の一点だけで上半身を支える座り方になる。
逆に座面が短すぎる人は、太ももの支えが足りずにお尻の後ろ側に体重が集まります。
どちらも「座面の奥行きが体に合っていない」という同じ原因から出る現象です。
肘掛けについては、無くても困らない人と、無いと肩が上がってしまう人に分かれます。
キーボードを打つとき、机の天板に前腕を乗せられる高さなら肘掛けの出番は少ない。
天板が高くて腕が浮くなら、肘を置ける場所がないぶん肩で腕の重さを支えることになります。
肘掛けの有無を決める前に、まず机の高さを測ってください。
一方で、価格帯にほぼ関係なく付いているのがガスシリンダーによる座面の高さ調整です。
ここは全機種に近い割合であるので、比較の材料になりません。
カタログの「高さ調整機能付き」という表記に価値を感じる必要はない。
安いオフィスチェアの種類は、背もたれの高さと座面の素材で分かれる
ローバック(背もたれが肩より低い)
価格を抑えた椅子でいちばん数が多いのがこの形です。
背もたれが短いぶん材料も機構も少なく、部屋の中でも圧迫感が出にくい。
ただし肩から上を支えるものがないので、休憩でもたれる姿勢には向きません。
机に向かって前傾で作業する時間が長い人なら、背もたれの上端が低くても不都合は出にくいという性質があります。
ハイバック(背もたれが肩より上まである)
背もたれが長いと、もたれたときに肩甲骨から上まで面で受けられます。
安い価格帯のハイバックで注意したいのは、ヘッドレストが固定式のものが多いこと。
位置が動かないと、身長によっては首ではなく後頭部の変な位置に当たり、かえって首を前に押される形になります。
可動式かどうかは製品ページの記載を確認してください。
メッシュ座面とクッション座面
メッシュは通気がよく、夏場に太ももの裏が蒸れにくい。
ただし張りが弱いものは使うほどたわみ、座面の中央が沈んで骨盤が後ろに倒れやすくなります。
クッション座面は沈み込みの感触が安定しやすい一方、中材が薄いと数か月で潰れて座り心地が変わる。
どちらが優れているという話ではなく、通気を取るか厚みを取るかの選択です。
合皮(PUレザー)張り
見た目の質感を安く出せるので、価格を抑えた製品でよく使われます。
表面が樹脂の層なので、汗や摩擦で数年後に表面が剥がれることがある。
汚れを拭き取れる利点と、経年で表面が劣化していく代償はセットです。
素材ごとの手入れの差は明るい色を選ぶときの汚れと素材の注意点で解説しています。
ご覧ください。
タイプ別に、向いている人と向かない人
下の表は、価格を抑えた椅子でよく見る組み合わせを、作業の中身から選び分けるためのものです。
順位ではなく、自分がどの行に当てはまるかで読んでください。
| タイプ | 構造の特徴 | 向いている人 | 向かない人 |
|---|---|---|---|
| ローバック・メッシュ座面 | 背もたれが短く、座面は通気重視。肘掛けなしが多い | 机に向かう時間が1日2〜3時間で、天板に前腕を乗せられる人 | もたれて休憩を取りたい人、座面の沈みが気になる人 |
| ローバック・クッション座面 | 座面に厚みがあり、沈み込みが安定しやすい | 硬い座面が苦手で、通気より座り心地を取る人 | 夏場に蒸れが気になる人 |
| ハイバック・メッシュ | 背中全面を通気素材で支える。ヘッドレスト固定式が多い | 作業と休憩を同じ椅子で切り替える人 | 身長がヘッドレストの想定から外れる人、置き場所の幅と高さに余裕がない人 |
| 合皮張り・肘掛け一体型 | 拭き掃除ができる。肘掛けは高さ固定 | 飲み物をこぼす機会が多い人、見た目を優先する人 | 肘掛けの高さを机に合わせたい人、5年以上使う前提の人 |
| 肘掛けなし・コンパクト | 幅が狭く、机の下に収まる | 机の脚の間に椅子を入れて使う人 | 腕が浮く高さの机を使っている人 |
「向かない人」の欄に自分が入るなら、その組み合わせは価格が魅力でも見送るほうが無難です。
狭い部屋で置き場所から絞り込む場合は、狭い部屋で見るべき寸法の基準で解説しています。
ご覧ください。
失敗しやすいのは「座面の高さが下がりきらない」パターン
安い椅子で起きるミスマッチのうち、返品や買い替えにつながりやすいのが座面の最低高です。
多くの製品は座面の高さを数センチの幅で上下できますが、その下限が身長の低い人に合わないことがある。
足の裏が床に届かないと、太ももの裏で体重を支える形になり、膝の裏が圧迫されます。
フットレストを足すという回避策もありますが、机の下が狭くなる。
次に多いのが、キャスターと床の相性です。
フローリングに硬いプラスチックのキャスターを使うと、動かすたびに床に跡が付くことがある。
逆に厚手のカーペットの上では、小径のキャスターが沈んで動かしにくい。
床の材質は先に決まっているので、キャスターの材質と径を製品仕様で確認してください。
三つめは、リクライニングを期待して買うパターンです。
安い価格帯で「リクライニング」と書かれていても、背もたれが数度倒れるロッキング機構(背もたれがバネで少し傾く仕組み)だけの製品と、角度を段階で固定できる製品が混在しています。
どの程度倒れるものが自分に必要かは、角度と使い方から見るリクライニングの目安で解説しています。
ご覧ください。
そしてもうひとつ、組み立てを軽く見ないこと。
座面と背もたれとガスシリンダーを自分で組む製品が多く、箱から出した部品の重さは十数キロになることもあります。
玄関から作業場所まで運べるか、床を養生できるかを先に考えておくといいでしょう。
安いオフィスチェアを買う前に測る数字は4つ
机の天板の高さ(床から天板の上面まで)
座面の高さをどこに合わせるかの基準になります。
前腕を天板に乗せて肩が上がらない座面高が分かれば、その値が椅子の高さ調整範囲に入っているかを製品仕様と突き合わせられる。
日本の一般的な事務机は70cm前後ですが、家庭用のデスクはこれより低いことも高いこともあります。
机の下の有効高さ(床から天板の裏、または引き出しの底まで)
肘掛け付きの椅子を机の下に入れたい場合、肘掛けの上端がここに収まらないと椅子が奥まで入りません。
引き出しや幕板がある机では、この数字が天板の高さより5〜10cm低くなります。
膝の裏から背中までの長さ
座面の奥行きを判断する数字です。
椅子に座った姿勢で、お尻の後ろから膝の裏までを測り、そこから2〜3cm引いた値が目安の座面奥行き。
製品の座面奥行きがこれより大きいと、浅がけになります。
椅子を置く床の面積
キャスターの脚は座面より外に広がるので、カタログの「幅」より実際の占有面積は大きくなります。
脚の直径(キャスター先端から反対側の先端まで)が記載されているかを確認してください。
壁際に置くなら、背もたれを倒したときに壁に当たらないかも合わせて見ること。
この4つが揃えば、製品ページの数字を見た時点で候補を絞れます。
測る道具は普通のメジャーで足ります。
基準の全体像を整理したい場合は、自宅で疲れにくい一脚を選ぶ基準で解説しています。
ご覧ください。
買ったあとに効くのは、届いた日の調整と半年ごとの見直し
組み立てて座って終わりにすると、せっかく合う寸法で選んでも意味が薄れます。
まずやるのは座面の高さ合わせ。
足の裏全体が床に付き、太ももが床とほぼ平行になる高さから始めて、そこから机に前腕を乗せて肩が上がらないかを見る。
両方を満たせないなら、椅子の高さは足に合わせて、腕の側はキーボードの位置や台で調整するほうが現実的です。
背もたれの角度が動く製品なら、作業中は起こし気味、休憩時に倒すという使い分けができます。
ロッキングの硬さを調整するダイヤルが座面の下にある製品もあり、体重に合っていないと勝手に倒れたり、まったく動かなかったりする。
取扱説明書を捨てる前に、どこに何のノブがあるかだけは確認しておいてください。
そして半年から1年で、座面のへこみとキャスターの回り具合を見ます。
クッションが潰れて座面が前に傾いていると、体は骨盤を後ろに倒して安定を取ろうとします。
座面の中央が周囲より明らかに沈んでいるなら、そこが買い替えを考える目安です。
キャスターは髪の毛やホコリが軸に巻き付くと転がりが悪くなるので、外して取り除けば戻ることも多い。
座り方だけでなく、手元の明るさが足りずに前のめりになっている場合もあります。
画面と書類の明るさの差をどう埋めるかは、明るさと配置で目の負担が変わる考え方で解説しています。
ご覧ください。
よくある質問
安いオフィスチェアはどのくらいで壊れますか
使用時間、体重、素材の組み合わせで大きく変わるため、年数を言い切ることはできません。
ただし劣化が先に出る場所は決まっています。
合皮の表面剥がれ、座面クッションの潰れ、キャスターの転がりの悪化。
このうちキャスターは交換部品が手に入る製品もあるので、本体ごと替える前に規格(軸の太さ)を確認してみてください。
肘掛けなしを選んで後から付けられますか
後付けの肘掛けは、座面の裏に取り付け穴が用意されている製品でないと固定できません。
汎用品を無理に付けると座面の裏側を傷めます。
肘掛けが要るかどうか迷うなら、机の天板に前腕を乗せた状態で30分ほど作業してみて、肩が上がるかどうかで判断するほうが確実です。
店で座って選んだほうがいいですか
座って確かめられるなら、そのほうが情報は多く得られます。
見るべきは座面の奥行きと背もたれの当たる位置。
ただし店の椅子は展示品で座面がへたっている場合もあり、机の高さも自宅とは違います。
数字を測って持って行き、展示品の仕様と突き合わせる使い方が現実的でしょう。
量販店やホームセンターのものと通販専売のものは違いますか
取扱いは店舗や時期で変わるので、どこに何があるとは言えません。
傾向として、実店舗に並ぶものは座って確かめられる一方、選べる型数は通販より少なくなります。
実店舗ブランドの型ごとの違いを整理したい場合は、種類の違いと選び方の目安で解説しています。
ご覧ください。
座っていて腰が痛くなるのですが、椅子を変えれば直りますか
椅子の寸法が体に合っていないと、腰の一点に体重が集まる座り方になりやすい。
ただし痛みの原因は座り方だけとは限りません。
痛みが続く場合や強くなる場合は、医療機関に相談してください。
まとめ
価格を抑えた椅子で削られるのは座面の奥行き調整と肘掛けで、高さ調整はほぼ全機種にあるため比較の材料になりません。
だから選ぶときは、背もたれの高さ、座面の素材、そして座面の最低高が自分の体に届くかを見ることになります。
「向かない人」の欄に自分が当てはまる組み合わせは、価格が魅力でも見送るほうが後悔が少ない。
まずはメジャーを持って、机の天板の高さと机の下の有効高さを測ってみてください。
その2つの数字があるだけで、製品ページの仕様表から候補を絞れます。
本記事を参考に、自分の机と体格に噛み合う一脚を選んでいただければと思います。
