エルゴノミクスキーボードはどう?形の違いと慣れの目安
手首を返さずにキーを打てるかどうか。
エルゴノミクスキーボードを選ぶときにいちばん効くのは、この一点です。
左右分割型は肩幅に合わせて2つのユニットを離せるため、腕を内側にひねる角度が減ります。
一体型でも中央を山なりに盛り上げた形なら、手のひらを内向きに倒す動きを浅くできる。
ただし分割型は打鍵位置を体が覚え直すまで速度が落ちますし、キー配列そのものが変わる製品もあります。
本ページでは、形の違いで何が変わるか・分割型と一体型の向き不向き・買う前に測るべき机の幅・慣れるまでの期間まで、まとめて紹介します。
エルゴノミクスキーボードで最初に見るのは、手首の角度と机の奥行き
一般的な平らなキーボードを打つとき、手首は2方向に無理をしています。
ひとつは手のひらを下に向けるためのひねり。
もうひとつは、キーボードの幅に対して肩幅のほうが広いために、前腕を体の内側へ寄せる動きです。
エルゴノミクス設計をうたう製品は、このどちらか、または両方を減らす形をしています。
だから選ぶときに見るのは、まず「どちらの角度に効く形か」。
中央が盛り上がった立体形状は手のひらのひねりに効き、左右が分かれる形は前腕を内側に寄せる動きに効きます。
両方に効かせたいなら、分割かつ傾斜のある型になりますが、そのぶん筐体は大きく厚くなる。
ここで机の奥行きが問題になります。
手前にパームレスト(手のひらを置く台)が一体化した製品は、キーの列より4〜7cmほど奥行きを食います。
天板の奥行きが50cm前後の机だと、モニターまでの距離が詰まって画面が近くなりがち。
机の広さに余裕がないなら、パームレストが別体か、そもそも付いていない型のほうが置き場所を作りやすいです。
なお、形を変えれば痛みが消えるとは言えません。
手首や肩の痛みが続いている場合は、道具を替える前に医療機関へ相談してください。
キーボードでできるのは、同じ姿勢を続けたときの負担のかかり方を分散させるところまでです。
キーボードの形は4種類、それぞれ何が変わるのか
左右分離型(セパレート)
左手側と右手側が完全に別のユニットになっていて、ケーブルまたは無線でつながる形。
肩幅に合わせて間隔と角度を自由に決められるのが最大の利点です。
間に書類やペンタブレットを置けるのも、この形だけの使い方。
代償として、2つのユニットが動くぶん位置が毎日ずれます。
決まった位置に固定したい人は、置き場所に印を付けるか、専用の台を使う前提で考えたほうがいい。
一体型のカーブ・ウェーブ形状
1枚の筐体の中でキーの列を波打たせ、中央を高く、左右を低くした形。
左右の分離幅は固定なので、肩幅が広い人にとっては角度改善が中途半端になります。
反面、机に置く動作は普通のキーボードと変わらず、位置がずれる心配もありません。
エルゴノミクス入門として選ばれやすいのは、この扱いやすさが理由です。
チルト(傾斜)付き・テント形状
中央部を持ち上げて、両手のひらを内側へ向ける角度を浅くする構造。
テントの角度を段階調整できる製品と、固定の製品があります。
角度が付くと手前のキーが遠くなるので、パームレストの有無で打ちやすさがはっきり変わる部分です。
縦置き(垂直)型
握手をするときの手の向きに近づけた、極端に立てた形。
手のひらのひねりはもっとも小さくなりますが、キーが見えないため完全なブラインドタッチが前提になります。
数字や記号を目で確認しながら打つ人には向きません。
タイプ別に見る、エルゴノミクスキーボードが向いている人と向かない人
形の違いは、そのまま「誰に合うか」の違いになります。
自分の作業内容と机の条件を横に置いて読んでください。
| タイプ | 構造上の特徴 | 向いている人 | 向かない人 |
|---|---|---|---|
| 左右分離型 | 2ユニットを任意の幅・角度に置ける。間にスペースが空く | 肩幅が広い人、長時間の文章入力が中心の人、机の幅に余裕がある人 | キーボードを頻繁に片付ける人、位置がずれるのが気になる人 |
| 一体型カーブ | 分離幅は固定。設置も収納も普通のキーボードと同じ | 初めてエルゴノミクス形状を試す人、共用の机で使う人 | 肩幅に合わせて幅を詰めたい人 |
| テント形状 | 中央を持ち上げて手のひらのひねりを減らす。角度調整式もある | 手首の内向きのひねりが気になる人、角度を試しながら決めたい人 | キーの刻印を見ながら打つ人 |
| 縦置き型 | ほぼ垂直。ひねりの軽減幅がもっとも大きい | ブラインドタッチが定着している人 | 記号や数字を目視して打つ人、複数人で使う机 |
表計算や会計の入力が多いなら、エルゴノミクス形状より先にテンキーの有無を決めたほうが作業効率に直結します。
分離型は右手側にテンキーを持たない製品が多く、必要なら別体のテンキーを買い足す前提。
数字入力の頻度から配置を考える手順は、配置と幅で見るテンキー付きの基準で解説しています。
ご覧ください。
逆に、マウスを置く面積を優先して幅を削りたい場合は、テンキーレスの幅の違いと向いている人で解説しています。
あわせてご覧ください。
エルゴノミクス形状で失敗しやすいのは、キー配列まで一緒に変える買い方
形を変えるだけなら、体が慣れれば済みます。
問題になるのは、形と同時にキー配列も変わる製品を選んだとき。
分離型の一部は、Enterやスペースの位置、記号キーの並びが一般的な日本語配列と違います。
さらに、左右のどちらに寄せるかを設定で決めるキー(BやYなど中央の列)は、製品ごとに割り当てが変わる。
この状態で仕事に使い始めると、形への慣れと配列の覚え直しが同時に来て、入力速度が想像以上に落ちます。
仕事の締め切りが詰まっている時期に切り替えるのは避けたほうがいい。
まず配列が普段使いと同じ製品を選び、形だけを変える。
これが遠回りに見えて確実な順序です。
もうひとつのミスマッチは、静かさを期待して選ぶこと。
エルゴノミクス形状かどうかと打鍵音の大きさは別の話で、立体形状の筐体は内部の空間が広く、かえって音が響く製品もあります。
同居する家族や通話の相手に音を拾わせたくないなら、キースイッチの方式と底打ちの処理から選ぶ話になる。
打鍵音を抑える方式ごとの違いは、音が小さい方式と効果の目安で解説しています。
ご覧ください。
買う前に測るのは机の幅とモニターまでの距離、確認するのは接続方式
測る場所は2つだけです。
1つめは、キーボードを置く帯の左右の幅。
分離型は左右のユニットを離すため、実測で50〜60cmを使うことも珍しくありません。
ここにマウスの動く範囲を足した数字が、天板の幅に収まるかを見てください。
マウスパッドの大きさを含めて考えるなら、素材とサイズで変わる使い心地で解説しています。
ご覧ください。
2つめは、天板の手前からモニターまでの奥行き。
パームレスト一体型を置くと、その厚みぶんだけモニターが近づいたのと同じ状態になります。
画面までの距離が40cmを切ると、視線の移動量が増えて首の角度が固定されやすい。
奥行きが足りないなら、モニター側を後ろに下げられるか、アームで浮かせられるかも同時に確認する話になります。
接続については、無線の分離型で見落としやすい点が1つ。
左右のユニット間を無線でつなぐ製品は、片側だけ電池が切れると入力が止まります。
充電の口が左右にあるのか片側だけなのか、仕様で確かめてください。
有線であればこの手間はありませんが、机の上をケーブルが横断します。
OSの対応も見る箇所です。
Windows用の刻印しかない製品をMacで使うと、修飾キーの位置が刻印と合いません。
専用ソフトで割り当てを変えられるかどうかは、製品ごとに違います。
慣れるまでの期間と、途中でやめないための調整のしかた
分離型に移った直後は、指がホームポジションを見失います。
多くの人が数日から2週間ほどで元の速度に戻ると語られますが、これは個人差が大きい部分。
最初の数日で「合わない」と判断して戻すと、形の効果を確かめる前に終わってしまいます。
試す期間を作るなら、間隔と角度を一度に決め込まないこと。
まずは肩幅より少し狭い位置から始めて、数日ごとに1cmずつ広げる。
テント角度も最小から。
角度を大きく付けるほど手前のキーが遠くなり、手首を持ち上げる動きが増えるためです。
前腕を机に置いたまま自然に指が乗る位置が見つかれば、そこが自分の設定になります。
手入れの面では、立体形状のキーボードはキーの谷間にほこりが溜まりやすい。
エアダスターや細いブラシが届く隙間があるかは、写真で分かる範囲でも確認しておくと後が楽です。
キーキャップが外せる構造なら掃除の自由度は上がりますが、外せる前提で選ぶ必要はありません。
なお、キーボードの形を替えてもマウス操作で手首をひねる動きは残ります。
ポインタ操作の側も含めて負担のかかり方を変えたいなら、トラックボール一体型の特徴と向いている使い方で解説しています。
ご覧ください。
座る姿勢のほうが先に効いている場合もあるので、机と椅子の高さ関係が気になるなら自宅で疲れない一脚を選ぶ基準もあわせてご覧ください。
よくある質問
エルゴノミクスキーボードにすれば手首の痛みはなくなりますか
形状が変われば手首にかかる角度は変わりますが、痛みが消えるとは言えません。
痛みの原因は入力姿勢だけでなく、机と椅子の高さ関係、作業時間の長さ、休憩の取り方にも関わります。
すでに痛みがある場合は、まず医療機関に相談してください。
分離型と一体型、初めてならどちらがいいですか
キー配列を変えずに形の効果だけを試したいなら、一体型のカーブ形状から。
設置も収納も普通のキーボードと同じ扱いで済みます。
肩幅が広くて前腕を内側へ寄せる感覚が強い人は、最初から分離型を選ぶ意味があります。
ゲームにも使えますか
製品しだいです。
同時押しの認識数(Nキーロールオーバーの対応範囲)や、キーの反応速度が仕様に書かれているかを確認してください。
分離型は左手側だけを手前に引ける利点がある反面、配列が独自だとキーバインドの設定をやり直すことになります。
ノートパソコンと一緒に使えますか
使えますが、ノートの画面が低い位置に残るため、視線が下がった姿勢は変わりません。
外付けキーボードを使うなら、ノート本体をスタンドで持ち上げるか、別のモニターを目線の高さに置く構成とセットで考えたほうが効果が分かりやすい。
持ち運ぶ画面から選ぶなら、持ち運べる画面を選ぶ基準で解説しています。
ご覧ください。
店頭で試せますか
取扱いは店舗や時期によって変わります。
分離型や縦置き型は展示台数が限られることが多いので、通販で買う場合は返品条件を先に確認しておくと安心です。
まとめ
選ぶ順序は、手首のどの動きを減らしたいかを決めて、その形が机の幅と奥行きに収まるかを測る、という2段階。
形とキー配列を同時に変えると入力速度の落ち込みが長引くので、まずは配列が普段どおりの製品から試すのが無理のない進め方です。
向かない人もはっきりしていて、キーの刻印を見ながら打つ人に縦置き型は勧められません。
まずはメジャーで、キーボードを置く帯の幅とモニターまでの距離を測ってみてください。
その2つの数字が決まれば、候補は自然に絞れます。
自分の手と机に合う形を見つける手がかりになればうれしいです。
