メカニカルキーボードの選び方|打ち心地と音の違い
キーを押した瞬間、カチッという音とともに指先に段差が返ってくる。
この感触の正体は、キー1つずつに独立したスイッチ(軸)が入っているという構造です。
メカニカルキーボードを選ぶときにいちばん効くのは、この軸の種類。
押し始めから反応するまでの重さと、途中に引っかかりがあるかどうかで、長時間タイプしたあとの指の疲れ方も、家族に聞こえる音量も変わります。
ところが売り場では「青軸」「赤軸」「茶軸」といった色名だけが並び、その色が何を意味するのかは書かれていないことも多い。
本ページでは、軸の重さと引っかかりで打鍵感が決まる仕組み・色ごとの向き不向き・テンキーを削ると何が起きるか・買ってから気づく机の高さの問題まで、まとめて紹介します。
メカニカルキーボードで最初に決めるのは、軸の重さと途中の引っかかり
軸を選ぶときに見る数字は2つです。
押し下げるのに要る力(押下圧、単位はcN/gf)と、キーが反応する深さ(アクチュエーションポイント、mm)。
それに加えて、押している途中に「カチッ」という引っかかりがあるかどうかという構造の違いがあります。
押下圧が軽いほど、指を持ち上げるときの負担は小さくなります。
ただし軽すぎると、手を置いただけで反応してしまう誤入力が増えることも。
逆に重い軸は誤入力しにくい代わりに、何千打も打つ日は指の付け根に疲れが溜まりやすい。
どちらが快適かは、1日に打つ量と指の力でまるごと変わるので、数値の大小だけでは優劣が付けられません。
引っかかりの有無は、もっと分かりやすく体感に出ます。
引っかかりのあるタイプ(タクタイル、クリッキー)は、反応した瞬間が指に返ってくるので「押せた」という確認が取りやすい。
引っかかりのないタイプ(リニア)は、底まですっと沈むので連打が滑らかになります。
文章を書く人がタクタイルを好み、ゲームでキーを連続して叩く人がリニアを選ぶ、という傾向はここから来ています。
もうひとつ、後から変えられるかどうかも判断材料になる。
ホットスワップ対応と書かれたモデルは、はんだ付けなしで軸を差し替えられる構造です。
最初の1台で自分の好みが分からないなら、対応モデルを選んでおくと、軸だけ買い替えて調整する道が残ります。
青軸・赤軸・茶軸、メカニカルキーボードの色名が示しているもの
色名は各メーカーが自社の軸に付けた識別で、業界共通の規格ではありません。
ただしドイツのCherry社が広めた色分けが事実上の共通語になっていて、他社も似た性格の軸に同じ色を当てることが多い。
以下は、その一般的な傾向です。
クリッキー(青軸系)
押している途中で「カチッ」と鳴り、同時に指にも段差が返る構造。
打っている実感がいちばん強く、タイプライターのような音を求める人に好まれます。
反面、音は3種類の中でもっとも大きい。
同じ部屋で家族が寝ている、通話しながら打つ、といった環境では選びにくくなります。
リニア(赤軸系)
底まで抵抗が変わらず、まっすぐ沈む構造。
段差がないので指の動きが止められず、連打や素早いキー移動と相性がいい。
音は3種類の中では静かなほうですが、キーが底に当たる音(底打ち音)は残るので、無音ではありません。
押した実感が薄いため、確認しながら打ちたい人には物足りなく感じることも。
タクタイル(茶軸系)
クリック音は出さず、指に段差だけを返す中間型。
文章入力で「押せた」を確認しつつ、青軸ほど音を出したくない人向け。
最初の1台で迷ったときの選択肢になりやすい性格です。
静音タイプ
軸の内部にゴムなどの緩衝材を入れ、底打ち音と戻りの音を抑えたもの。
ピンク軸、静音赤軸などの名前で売られています。
音の絶対量は下がりますが、静音とうたっていてもメンブレンやパンタグラフより大きい場合があります。
どのくらい下がるかは製品ごとに差が大きい。
音の小ささを最優先にするなら、方式ごとの傾向から比べたほうが確実です。
どの方式がどのくらい静かなのかは、音が小さい方式と効果の目安で解説しています。
ご覧ください。
タイプ別の向き不向きを、作業内容と設置環境から一覧で
軸の性格は、作業内容と「音を出せる環境かどうか」の掛け算で向き不向きが決まります。
数値は製品によって幅があるため、下の表は一般的な傾向としてご覧ください。
| タイプ | 構造上の特徴 | 音の傾向 | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| クリッキー(青軸系) | 途中でクリック音と段差が発生 | 大きい | 個室で作業し、打鍵感と音を楽しみたい人 |
| タクタイル(茶軸系) | 段差はあるがクリック音なし | 中程度 | 文章入力が主で、押した確認は欲しい人 |
| リニア(赤軸系) | 抵抗が一定でまっすぐ沈む | やや小さい | 連打や素早いキー移動が多い人 |
| 静音タイプ | 緩衝材で底打ち音と戻り音を抑制 | 小さめ(製品差が大きい) | 家族と同室、通話しながら打つ人 |
| 低押下圧の軽い軸 | 押し始めの力が小さい | 軸の種類による | 1日に打つ量が多く、指の力が弱い人 |
向かない人も書いておきます。
メカニカル方式そのものが合いにくいのは、まず薄型キーボードの浅い打鍵に慣れている人。
メカニカルはキーの沈む深さ(キーストローク)が一般に3.5〜4mm前後あり、ノートパソコンの1〜2mm台から移ると、指を深く動かす感覚に馴染めないことがあります。
次に、頻繁に持ち運ぶ人。
キー1つずつにスイッチが入るぶん本体は厚く重くなり、カバンの中で場所を取ります。
薄さや軽さを優先するならパンタグラフ方式との構造の違いで解説しています。
ご覧ください。
メカニカルキーボードの選び方で失敗しやすいのは、音と配列の見落とし
いちばん多いミスマッチは、音です。
動画で聞いた打鍵音が心地よかったので青軸を選び、家族から指摘されて使えなくなる。
あるいは通話中に相手からタイプ音を指摘される。
動画の音はマイクの位置とゲインで印象が変わるので、実際の部屋でどう響くかとは別物として考えたほうがいい。
同居している人がいる、通話が多い、深夜に打つ、このどれかに当てはまるなら静音タイプかタクタイルから検討するのが無難です。
2つめは配列の思い込み。
海外メーカー製にはUS配列(英語配列)が多く、日本語配列とはEnterの形、記号の位置、変換キーの有無が違います。
US配列では「かな/英数」の切り替えを別の操作で行うことになり、慣れるまで入力速度が落ちる場合があります。
商品ページの「日本語配列」「US配列」の表記は、必ず注文前に確認してください。
3つめは、キーキャップの素材と印字方式。
ABS樹脂は打っているうちに表面が光沢を帯びやすく、PBT樹脂はざらついた質感が長く残る傾向があります。
印字がレーザーやシルクスクリーンで表面に乗っているだけの製品では、文字が薄くなることも。
長く同じ見た目で使いたいなら、二色成形(ダブルショット)や染料昇華の表記を探すことになります。
4つめは接続方式。
無線モデルでも、遅延を気にする用途では有線接続を選ぶ人が多い。
ただし用途と製品によって体感差は変わるので、無線が使えないと決めつけなくてよい。
無線を選ぶなら電池の持ちと接続方式の違いを見る必要があります。
Bluetoothと2.4GHzドングルで運用が変わる点については、接続方式と電池の目安で解説しています。
ご覧ください。
買う前に測るのは机の奥行きと、キーボードを置く高さ
サイズ選びの基準は、キー数で呼ばれるフォーマットです。
テンキー付きのフルサイズは幅440mm前後、テンキーを省いたテンキーレス(TKL)は約360mm、さらに削った65%や60%は300mm前後。
数字を打つ機会が少ないなら、テンキーを削った分だけマウスを動かす面積が増えます。
表計算で数値入力が多い人は、テンキーレスにすると数字入力のたびに上段へ手を伸ばす形になるので、そこは実際の作業内容で決めてください。
測る場所は2つ。
ひとつは机の奥行きで、キーボードの手前に手首を置く余裕(10cm前後)が残るかを確認します。
奥行きが60cmを下回る机だと、モニターを置いたあとでキーボードと手首の場所が窮屈になりがち。
もうひとつは、キーボードを置いたときの手前側の高さ(フロントハイト)です。
メカニカルは本体が厚いため、机に直置きすると手首が反り上がる姿勢になりやすい。
パームレストを併用するか、天板の高さを下げられるかを先に考えておくと、届いてから困りません。
マウスと並べる前提なら、マウスパッドの幅も一緒に見ておいてください。
テンキーレスにして空いた面積をどう使うかは、パッドのサイズで決まります。
キーボードの幅とパッドの幅を足した合計が、机の横幅を超えないかだけは計算しておくといい。
サイズと素材の考え方は、素材とサイズで変わる使い心地で解説しています。
ご覧ください。
メカニカルキーボードは掃除と部品交換で長く使える構造
キー1つずつが独立したスイッチという構造は、手入れの面でも効いてきます。
キーキャップはキープラー(引き抜き工具)で外せるものが多く、外した状態で内部のほこりをブロワーで飛ばせる。
キャップ自体はぬるま湯で洗って完全に乾かせば再装着できます。
一体成型のキーボードでは、ここまで分解できません。
特定のキーだけ反応が悪くなったときも、原因を絞り込めます。
ホットスワップ対応なら、その軸だけ抜いて別の軸に差し替えれば直ることがある。
非対応モデルでもキャップを外して接点まわりのほこりを取り除くと改善する場合があります。
ただし基板のはんだを外す作業や、軸の分解は自分でやらないほうがいい。
保証が切れるだけでなく、元に戻せなくなります。
ここで注意点をひとつ。
水洗いできるのはキーキャップだけで、基板や軸が付いた本体は洗えません。
飲み物をこぼした場合は、すぐ電源を抜いて逆さにして水を出し、乾くまで通電させないこと。
乾く前に電源を入れると、基板が損傷することがあります。
それでも打鍵で手首が痛むなら、原因はキーボードではなく手の角度にあることも。
左右分割型や角度の付いた形状で改善する人もいます。
形の違いと慣れるまでの期間は、形の違いと慣れの目安で解説しています。
ご覧ください。
なお、痛みや違和感が続く場合は医療機関に相談してください。
よくある質問
メカニカルキーボードは静音タイプなら夜でも使えますか
静音タイプは緩衝材で底打ち音と戻り音を抑える構造なので、同じ形の非静音モデルより音は小さくなります。
ただし完全な無音にはなりません。
壁が薄い、床に直接響く、深夜で周囲が静か、といった条件では聞こえる可能性が残ります。
打ち方も影響するので、底まで強く叩かず途中で指を止める打ち方に変えると音量が下がることも。
軸の色は買ってから変えられますか
ホットスワップ対応モデルなら、キーキャップと軸を工具で抜いて別の軸を差し込めます。
非対応モデルは基板にはんだ付けされているため、交換には専用の工具と技術が必要です。
最初の1台で好みが読めないなら、ホットスワップ対応の表記があるものを選んでおくと後で調整できます。
テンキーレスとフルサイズ、どちらを選ぶべきですか
数字入力の頻度で決まります。
経理や表計算で毎日数値を入れるならテンキー付き。
それ以外の作業が主で、机の横幅が狭い、またはマウスを大きく振るならテンキーレス。
テンキーだけを別の外付けで用意して、必要なときに机に出す方法もあります。
US配列と日本語配列で入力速度は変わりますか
慣れた配列であればどちらも変わりません。
問題は乗り換えたとき。
記号の位置とEnterの形、かな入力の切り替え方法が違うので、慣れるまでは打ち間違いが増えます。
日本語を多く書くなら日本語配列から始めるほうが移行の負担は小さい。
ゲーム用と文章入力用で選ぶ軸は違いますか
傾向としては違います。
キーを素早く連続して押すゲームでは、抵抗が一定で沈むリニア系が選ばれやすい。
文章入力では、押した瞬間が指に返るタクタイル系を好む人が多い。
ただし個人の好みの幅が大きく、逆の組み合わせで快適に使っている人もいます。
まとめ
メカニカルキーボードの選び方は、軸の重さと途中の引っかかり、そして音を出せる環境かどうかで大枠が決まります。
同室に人がいるなら静音タイプかタクタイル、連打が多いならリニア、打鍵感を優先できる環境なら青軸系。
サイズは数字入力の頻度と机の横幅から逆算してください。
まずは今使っているキーボードの幅と、机の奥行きをメジャーで測るところから始めてみてください。
数字が手元にあれば、商品ページの寸法表と突き合わせるだけで候補は一気に絞れます。
長い時間手を置く道具ですから、自分の作業内容に合う1台を選んでいただければと思います。
