メカニカルキーボードの軸の違い|重さと音で選ぶ基準
メカニカルキーボードの「軸」は、キー1つずつの下に入っている独立したスイッチのことです。
赤軸・茶軸・青軸といった色の名前は、そのスイッチの押し心地を分ける区分で、押し込んだときに引っかかりがあるか、カチッと音が鳴るか、どのくらいの力で反応するかが変わります。
厄介なのは、同じ「赤軸」でもメーカーが違えば押す重さや反応する深さがずれること。
色だけを見て選ぶと、静かなつもりで買ったのに家族から音を指摘される、という結果になりがちです。
本ページでは、軸の名前が何を指しているのか・押し心地ごとの違いと向く人・自分の環境から選ぶ順番・表記がメーカーでずれる理由まで、まとめて紹介します。
メカニカルキーボードの軸とは、キー1つずつに独立したスイッチが入っている構造のこと
まず構造から整理します。
安価なキーボードの多くは「メンブレン」や「パンタグラフ」と呼ばれる方式で、ゴムのシートや薄い樹脂の板を1枚敷き、その上に全部のキーが乗っています。
押すとシートがたわんで接点がつながる仕組みです。
対してメカニカルキーボードは、キーの数だけスイッチ部品が並んでいます。
1つ壊れてもそのキーだけの話で済み、押し心地はスイッチの内部構造で決まります。
この個々のスイッチが「軸」です。
名前の由来は、スイッチ中央から突き出た十字の突起(ステム)で、キーキャップはここに差し込まれます。
十字の形が共通なので、同じ規格の軸ならキーキャップを別の製品と交換できます。
色の名前は、この軸の内部構造の違いを表すために各社が付けた呼び分けです。
世界的に広まった理由は、ドイツのCherry社が製造するCherry MXシリーズが赤・茶・青・黒などの色で分類し、それが業界の共通語のように使われるようになったこと。
ただし色は登録された規格ではありません。
他社が同じ色名で似た性質のスイッチを出しているだけで、数値が一致する保証はありません。
仕様表で見るべき数値は3つあります。
押し始めてから反応するまでの深さ(アクチュエーションポイント、mm)、最後まで押し込んだ深さ(ストローク、mm)、反応するのに必要な力(押下圧、gまたはcN)。
色の名前より、この3つの数字のほうが実際の使用感に近い情報です。
押し心地は3系統に分かれる。リニア・タクタイル・クリッキーの違い
色の数は多く見えますが、押したときの感触は大きく3系統しかありません。
この分類を先に頭に入れておくと、初めて見る色名でも仕様表から性質を読めます。
| 系統 | 代表的な色名 | 押した感触 | 音 | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|
| リニア(直線的) | 赤軸・黒軸・銀軸など | 底まで引っかかりなく沈む | 底打ちの音のみで比較的静か | 長時間の文字入力、同じキーを素早く連打するゲーム、家族と同室で使う人 |
| タクタイル(触感あり) | 茶軸・クリア軸など | 反応する位置で軽い抵抗を感じる | リニアよりわずかに大きい | 押したかどうかを指で確かめたい人、文字入力とゲームを兼用する人 |
| クリッキー(音あり) | 青軸・緑軸など | 抵抗に加えてはっきりした節度 | カチッという音が明確に鳴る | 単独の部屋で使い、打鍵音そのものを楽しみたい人 |
リニアは内部の突起が単純な形で、押す力が深さに比例して増えていきます。
どこで反応したかが指では分かりにくいぶん、途中で止めずに底まで打ち切る打ち方と相性がいい。
タクタイルは突起に山を作っていて、その山を越える瞬間に指へ抵抗が伝わります。
反応した位置が分かるので、底まで打たない打ち方でも取りこぼしを感じにくい。
クリッキーは、内部に別の部品を入れて音と節度を作っています。
指への手応えははっきりしますが、その代償として音量が上がる。
Web会議中にマイクが拾う可能性が高いのは、この系統です。
同居している人がいる環境や、通話しながらの作業が多い人には向きません。
静音を名前に持つ軸
「静音赤軸」「サイレント」と付く軸は、内部にゴムなどの緩衝材を入れて、底に当たる音と戻るときの音を抑えたものです。
無音にはなりません。
緩衝材が入るぶん、底に着いたときの感触は少しぼやけます。
音の小ささを優先するか、押し切った感触の明確さを優先するかの選択になります。
軸を選ぶ順番は、使う部屋の条件から逆算する
好みで決めてください、では判断できません。
次の順で条件を潰していくと、候補はかなり絞れます。
最初に決めるのは音です。
ワンルームで同居人が寝ている時間に打つ、あるいは日中にオンライン会議が入るなら、クリッキーは候補から外します。
この段階でリニアと静音タイプに絞られます。
逆に自室が独立していて、通話中はマイクをミュートにできる環境なら、3系統すべてが候補に残ります。
次に押下圧を見ます。
一般的なメカニカル軸は45g前後を中心に、軽いものは35g台、重いものは60g前後まで幅があります。
1日に何千字も打つなら、指が沈みきる前に反応してくれる軽い軸のほうが、指の負担は小さくなりやすい。
ただし軽すぎると、手を置いただけで入力されることが増えます。
人差し指で軽く机を叩くくらいの力で入力したいなら軽め、意識して押したいなら45g以上を目安にしてください。
最後がアクチュエーションポイントです。
一般的なメカニカル軸は総ストローク4mm前後、反応する深さは2mm前後。
ゲーム向けをうたう軸ではここが1.2mmや1.5mmと浅く設定されており、反応は早い代わりに、キーに指を乗せただけで入力される誤打が増えます。
文字入力が主なら、標準的な2mm前後から始めるほうが失敗しにくいです。
この3項目を決めれば、系統と押下圧の組み合わせで候補は数種類に落ちます。
ここまで絞ってから、実際の製品の仕様表を照らし合わせる順番です。
同じ色名でも数値がずれる理由と、確認すべき場所
色名は各社が独自に付けた呼び分けなので、A社の赤軸とB社の赤軸で、押下圧が数g、反応する深さが0.数mm違うことがあります。
中国メーカーの軸を採用した製品では、色名だけが同じで内部の樹脂やバネの仕様が別、というケースも珍しくありません。
「赤軸だから前と同じ感触」という前提は、メーカーをまたいだ時点で成り立ちません。
ではどこを見るか。
商品ページの仕様欄に「スイッチ」「キースイッチ」という項目があり、そこにメーカー名と型番、そして押下圧・ストローク・アクチュエーションポイントが並んでいるのが理想です。
書かれているのが色名だけなら、判断材料は足りていません。
メーカーの製品ページやスイッチメーカー側の公表値まで辿るか、その製品は候補から外すという判断もあります。
もう1つ確認したいのが、キースイッチを自分で差し替えられるかどうか。
ホットスワップ対応と書かれた製品なら、はんだ付けなしに軸だけを交換できます。
軸の選択に確信が持てないなら、この機能がある製品を選び、後から別の軸を試すという逃げ道を作れます。
ただし対応するスイッチの端子形状(3ピン・5ピン)に制約があるので、交換用を買う前にそこを確認してください。
軸が合わないと出てくる不具合と、押し心地に関わる周辺の要素
軸の選択を外したときに出る症状は、だいたいはっきりしています。
押下圧が重すぎれば、長文を打った後に指の付け根や手首が疲れます。
軽すぎれば、キーに手を休めた瞬間に文字が入る誤入力が増える。
反応する深さが浅すぎる軸では、隣のキーへ指をずらす途中で入力されてしまうこともあります。
クリッキーを選んで同居人に指摘されるのは、買ってから気づく典型例です。
指や手首の痛みが続く場合は、道具を替える前に医療機関へ相談してください。
ただし、打鍵感を決めているのは軸だけではありません。
キーボード本体のケースが薄いプラスチックだと打った音が内部で響き、同じ軸でも音は大きく聞こえます。
キーキャップの厚みや素材(ABSかPBTか)でも、指の当たりと音は変わる。
机に直接置くか、下に何か敷くかでも響き方は変わります。
軸を替える前に、こうした周辺から手を入れたほうが早い場合もあります。
手首の角度も打鍵の疲れに関わります。
メカニカルキーボードはメンブレンより本体が厚く、手前側の高さが出やすいので、手首が反りやすい構造です。
リストレストで高さを合わせる考え方は、高さと素材の合わせ方で解説しています。
ご覧ください。
メカニカルキーボードの軸は、購入前に実物を触れる場所があるかで難易度が変わる
数値まで確認しても、押し心地の感じ方には個人差があります。
可能なら実物を触るのが確実です。
家電量販店のキーボード売り場には、複数の軸を1つの台に並べたスイッチテスターや、実機の展示が置かれていることがあります。
取扱いは店舗や時期で変わるので、行く前に扱いの有無を問い合わせるほうが無駄足になりません。
触れる場所が近くにない場合の代替は2つ。
1つは、静音タイプのリニア軸から入ること。
音の問題が起きにくく、押し心地も極端ではないので、後から自分の好みがどちらへ寄っているか判断しやすい。
もう1つは、前述のホットスワップ対応機を選び、交換用のスイッチを少量だけ買って一部のキーで試す方法です。
全キーを替える前に、数個で感触を確かめられます。
なお、キーボードを替えると手の位置が変わり、マウス側の置き場所も変わります。
机の上の配置ごと見直すなら、素材とサイズで変わる使い心地で解説しています。
ご覧ください。
姿勢そのものが気になっているなら、キーボードより先に座る側から整える手もあります。
座面の高さと机の関係については、自宅で疲れない一脚を選ぶ基準で解説しています。
ご覧ください。
よくある質問
初めてメカニカルキーボードを買うなら、どの軸が無難ですか
用途が文字入力中心で、部屋を家族と共有しているなら、リニア系の赤軸か、その静音版が扱いやすい選択です。
押下圧45g前後、反応する深さ2mm前後という標準的な仕様が多く、後から別の軸に移ったときに「前より重いか軽いか」を基準として比べられます。
逆に、押した感触をはっきり指で受け取りたいならタクタイル系から始めても構いません。
青軸はどのくらいうるさいのですか
具体的な音量は本体の構造や設置場所で変わるため、一律の数値では言えません。
ただし内部に音を出す機構を持っているという点で、リニア系より明確に音が出る設計です。
Web会議でマイクが拾いやすく、静かな部屋では隣室に届くこともあります。
同居人がいる環境や通話が多い作業では、選ばないほうが無難です。
軸だけを後から交換できますか
製品がホットスワップに対応していれば、工具でキーキャップとスイッチを外し、別の軸に差し替えられます。
対応していない製品は基板にはんだ付けされているため、交換にははんだごてでの作業が必要で、保証の対象外になることが一般的です。
交換の可能性を残したいなら、購入時にホットスワップ対応の記載と、対応するスイッチのピン数を確認してください。
まとめ
軸の色名は各社が付けた呼び分けで、実際の使用感を決めているのは押下圧・ストローク・アクチュエーションポイントという3つの数値です。
選ぶ順番も決まっていて、まず使う部屋の音の条件で系統を絞り、次に押下圧、最後に反応する深さを見る。
この順で潰していけば、候補は数種類まで落ちます。
まずは、いま使っているキーボードを打ちながら、音が問題になる環境かどうかを確かめてみてください。
そのうえで気になる製品の仕様欄に3つの数値が載っているかを見比べれば、色名だけで選ぶより確実に自分に近いものへ寄せられます。
